キミ色
電車の中で、俺は蓮から昨日の話を聞いた。


まず、何故俺が蓮の家にいたか…
昨日の夜、俺は空羽から離れようとしてまたあの公園にいたらしい。
そう、あの花火をした公園だ。


そこの草原で寝ていた俺を蓮が拾ってくれたみたいだ。
梅雨の時期の夜は、そこまで寒くも暑くもなく丁度良い気温だったのを覚えている。
だから、あの草原で俺は寝てしまったのだろう…



まさか、彼女に公園で拾われるとは…
昨日まで誰が予測できただろう?



そして蓮は、俺をあの部屋に運んでくれたのだ。
そう…、あの部屋に。



“あそこはママとパパの部屋なの”



その言葉を聴いてようやく辻褄があった気がした。
あの部屋に2つのベッドがあった理由。
そして、蓮の目があの部屋に入った瞬間少し変わったことも…



あの言葉を言った時の蓮は何を考えていたんだろう?
どんな想いで、俺をあの部屋に入れてくれたんだろう?



そう考えると、急に申し訳なく想う自分がいた。
蓮の大切な場所に土足で踏み込んでしまったような気がして…



隣を向くと、電車の窓から景色を眺めている蓮の姿が映る。



動いていく町並みは、俺達を運ぶ電車とは逆方向に動いていく。
そんな町の中に、一体何人の人が身を任せているんだろう?



何人の人が泣いているんだろう?
何人の人が笑っているんだろう?


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