キミ色
何年ぶりだろう…
こんなに無我夢中になって遊ぶことなんて珍しかった。


何も考えずに、蓮との時間を大事にしたかった。
俺は必死で距離を置こうとしてたんだ。



聡クンがスコップを使って砂のお城を作り始めていた。
だんだんと形が出来上がっていくお城。
そんなお城作りを蓮は手伝っていた。


キラキラと光っていた海がなくなっていく。
波が寄せては返し、独特の音を鳴らしていた。


夕陽も、もうすぐ沈みそうだった。



俺は、レジャーシートに座り海を眺めていた。
聡クンの為にも、親子の時間を作ってあげたいと想ったからだ。


聡クンには俺のようになってほしくないから。
いっぱい愛情をうけて育って欲しい。



だって、君は蓮の支えだから。
あんな小さな体で蓮を支えているんだから。


俺なんかよりずっと聡クンは強かった…。



俺はさっき自販機で買ったペットボトルの蓋を開けた。
勿論中身はレモンティーだ。



今日は一回も飲んでなかったレモンティーを流し込むと、いつもの味が体全体を包んだ。
やはり、レモンティーは俺を落ち着かせてくれる。



そして、目の前に果てしなく広がるこの海もだ。
この広大な海が、俺の壊れそうな心を癒してくれていっているような気がした。



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