キミ色
呟く蓮の声が愛しくて、俺は蓮の体をそっと包んだ。
そして、一言ぽつりと呟いた。



「……ごめんな─…」



そう言って、さっきよりも蓮を強く包んだ。
もう、放さないように…
絶対に、1人にしないように─…



蓮は同じように俺の体をしっかりと掴んできた。
そして、俺の服を濡らしていった…。



沁みこんでいく涙は、まるで蓮の感情のようで、俺の心を占領した。
1人にしないで、誰もとらないで、ってそんな言葉が、俺には聴こえた気がした。



どこにもいかないよ…蓮。
俺は絶対にお前を守るよ。



今は、俺の心が弱いから、勇気がないから、まだ何も言えないけど…
きっといつか、蓮には伝えるから─…



“花音は俺を変えてくれた人なんだ”って。
“花音は俺の大切なヒトだったんだ”って。



いつか絶対にそう言って、蓮を安心させるから…
その時まで、時間を頂戴?



いつか胸を張って、花音が紹介できるようになるまで、俺に猶予を─…




不安にさせてごめんね…
苦しめてごめんね…
辛い想いをさせて、ごめん…
でも、一つだけ約束するよ。




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