キミ色
「…あたし、信じるよ?」


涙を流しながら、蓮は俺の顔を見てくる。


まだ、疑ってるの?
当たり前でしょ?


俺はこくんと頷くと、蓮は俺にご褒美をくれた。
一瞬だけ俺の頬に触れた蓮の唇。


蓮はすぐに顔を離すと、照れながらも満点の笑顔を向けた。


そんなことをされたら、もっと求めちゃうでしょ?
だって、こんなに照れてる顔を見せられたら…



「ズルいなぁ、蓮は…」



そう言って、俺は蓮の唇にそっと自分の唇を乗せようとした。
ゆっくりと瞳を瞑っていく蓮。


でも、俺は後数センチのところで動きを止めた。
ちょっと蓮に悪戯したくなったんだ。



「やっぱ、やーめた!!」



そう言うと、ぱっと瞳を開ける蓮。
いかにも不思議そうに“何で”と言った表情を、俺に向けてくる。



やっぱり。
その顔をすると想った。


あのぽかんとした蓮の表情が好きなんだ。
ごめんね?
でも、好きなものは仕方ないでしょ?



俺は堪えきれず笑うと、蓮の脹れている頬を人差し指で押した。



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