キミ色
嬉しい…?
嬉しいから泣いてるの…?


俺には、そのことが理解できなかった。


だって涙は悲しいときに流すものだ。
辛い時に、苦しい時に…


心が支えきれなくなる時に、ヒトは泣いてしまうんじゃないの?


そんな経験しかない俺はまだまだ子供なのかな…?



「ありがとう、櫂」



泣きながら大切そうに蓮はそう言ってくれた。


違うよ、蓮…
俺は蓮を不安にさせたのに…、そんな言葉貰える立場じゃない。



「…ごめんな、蓮」



謝っても、蓮の苦しかった日々がなくなる訳じゃない。
でも、言わずには居られなかった。


許してほしいとか、そんなことを想ってるんじゃない。
ただ、不安にさせたことを素直に謝りたかった。



優しいから蓮はいっつも頷いてくれるよね。
やっぱり、蓮は強いんだ。



たまには、弱さを見せてもいいんだよ?
辛い時は、誰かを頼っていいんだよ?



“俺を頼れ”なんて、今は口が裂けても言えないけど…
でも、いつかきっとそんなことが言える日が来るように精一杯努力するから。



だから、蓮には笑ってて欲しいんだ─…



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