キミ色
…蓮さん?
彼氏に朝会って第一声がそれですか…?


俺は、おはよう、すら言わして貰えずに呆れながら傘を閉じていると、奥から聡クンの大きな声が響いてきた。



「あったぁー!!!」


その声に部屋の中に入っていった蓮は、走って聡クンのところまで行ってしまった。


はぁ…
毎朝、本当に賑やかな家だ。


俺はせっかく閉じた傘を開けると、蓮と聡クンが出てくるのを待った。



「ごめんね、櫂!!」


そう言って、ようやく出てきたお姫様の髪の毛は、もうボサボサだった。
隣に居る聡クンは黄色の長靴に黄色の傘を持つと、走って水溜りまで行ってしまった。



水溜りの中を勢いよく楽しそうに跳ねる聡クン。
周りに飛び散る水が、まるで生きているみたいに放物線を描く。



そこに蓮の罵声が鳴り響いた。


「聡!!止めなさい。制服汚れちゃうでしょ!?」



その声に素直に従った聡クンは、また走り出し幼稚園のバスが停まる所まで行ってしまった。


「…もう、聡の奴、、」



呆れてそう零している蓮。
でも、その表情はやっぱりどこか温かい。



聡クンを見つめるその瞳は、やっぱり母親なんだ。



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