キミ色
その時だけ、少し聡クンをライバル視してしまう。
聡クンと張り合うのは可笑しい、と自分で解っているけど感情はどうしようもない。



まさか、相手が5歳の男の子になるとは。
でも、確かに俺の相手は聡クンなのだから、仕方がない。


たまに羨ましくなるんだ、あの暖かい瞳を向けられる聡クンが。



隣で蓮が赤の可愛らしい傘を差すと、俺達は歩き出した。


「もう、ごめんね。毎朝…」


蓮は鞄の中から小さな瓶を取り出しながら、俺の方を向いた。


「もう、慣れっこですけど?」



そう言って、俺もポケットの中から同じ瓶を取り出す。
ただ1つ違うのは、蓮の瓶は少しピンク色に染まっているということだけだ。



「はは…、だよねー」


苦笑いを浮かべながら、前を向いた蓮に俺はその小瓶を差し出した。
蓮も当たり前のように小瓶を俺の掌に置く。


仄かにピンク色に染まっている小瓶を手でぎゅっと握りしめると、俺はポケットの中に入れた。



この行事は俺達の約束。
中に入っているのは、俺達の香水の香りだ。



離れていてもお互いを感じられるように。
この匂いを嗅ぐと、どこか安心できる自分がいる。



それはきっと蓮も同じなのだろう。



なんて、自惚れてもいいよね?
だって、これは蓮が言い出したのだから。


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