キミ色
毎朝渡して、帰る時に帰す。
もし、一緒に帰れなかった時に寂しくないように。


これなら、1人で帰らなくてすむから。
この小瓶に触れている間は、2人で帰ってるような気分になれるから。


まぁ、絶対に一緒に帰るのだから本当は必要ないんだけど…
蓮がどうしても、というから俺はその約束を守っている。


だって、いくらかっこいい王子様でも、お姫様にせがまれたら、拒めないでしょ?


それに、俺は蓮の笑顔が好きだから。
笑っててほしいから。



無事に聡クンを送り出すと、俺達は逆の方向に足を向けた。
聡クンのバス停と俺達の学校は間逆にある。



「はぁ…疲れた。」


いかにもしんどそうに言葉を吐いた蓮に、俺はもう一言付け足した。


「髪の毛ボサボサですよ?」


「…嘘!!?」


さっきまで疲れた顔をしていた蓮の表情が一瞬の内に変わった。
そして咄嗟に鞄の中を探り鏡を取り出すと、鏡とにらめっこを始め出す。



「やっばー、もう直んないよ」


10分ぐらいずっと鏡を見続けている蓮は、愚痴を吐きながら俺の隣を歩き続ける。
流石に10分ずっと愚痴を聞くのも、しんどくなってきた。



「もう、十分可愛いよ?」


「どこが!?やばいよ…、こんなんで教室入れない」


これが女子のプライドというもの?
いつもとそんなに変わらない気がするけど…



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