キミ色
この坂を上っていけば、ようやく学校が見えてくる。
結局、蓮はずっと鏡を放さないままここまで来てしまった。



よくそんだけ鏡見てて飽きないな…
なんて考えたりしながら歩いていると、後ろから聴きなれた声が聴こえてきた。



「櫂ー!!」


振り向かなくても解るけど、俺は後ろを向いて声の主に笑顔を向けた。
雨が降っているのにも関わらず、傘もささずに走ってくるのは時雨だ。



「やばい、冷たい冷たい。風邪引くー」


そう言いながら、無理矢理俺の傘の中に入ってくる。
傍から見れば、変な光景だ。


男が2人ビニール傘に入っているなんて。
多分、相当気持ち悪い映像になっているだろう。



時雨は雨に濡れた髪をかきあげると、パッと俺に笑顔を見せた。



かっこいい…
やっぱり、時雨は何をしてもかっこいいんだ。


どれだけ雨に打たれていても、髪の毛が整ってなくても、鞄がびしゃびしゃでも…
まるで、映画に出てくる主人公みたいに。



時雨を見ると、どうしても想ってしまう。
神様は最強に不平等だと。


でも、神様を恨んでる訳じゃない。
むしろ感謝してるんだ、蓮に出逢わせてくれたことに…


「おはよう、時雨!」


「おはよ!」


蓮と時雨が朝の挨拶を交わし、俺達はまた前を向いて歩き出した。
これが、俺の日常。
何も変わらない、俺の毎日。


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