キミ色
「大切なの、って言ってたのに…、落としたのかな?」


不思議そうな表情をしながら蓮は指輪を掌の上で転がす。


違うよ、蓮…
だって、それは時雨の大切な─…



「ねぇ、蓮…ちょっと、見せて…?」


掌を広げると蓮はコトンと上に置いてくれた。
夕陽に翳してみると、やっぱりあの時と同じ光を放っている。



紛れもなく、いつか俺の部屋で2人で寝てた時に、浴びた光だった。
時雨の薬指にはめてあった指輪だった…



「これを…若菜チャンが、、、?」


半信半疑の俺は、蓮に耳を傾ける。



「そうだよ。かっこいいでしょ?って、言って自慢してきたの。宝物なんだって」


「それ…、いつ言ってたの?」



「うーん…、あんまし覚えてないけど、1ヶ月前ぐらいかな…?」


1ヶ月…。


「でも、変なんだよね…」


そう呟いた蓮の言葉に、俺は顔を上げた。




「“宝物”って言って肌身離さず持ってるのに、未だに指につけてる所みたことないんだ…。」




………?!
…それって、、、



若菜チャン…、だから俺に訴えかけたんだ…。
キミの心は、他の誰でもなく─…、時雨に向かっているから─……。




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