キミ色
思わず呟いてしまっていた言葉は、行き場もなく空気に溶けて行く。



やっぱり、時雨はずるいよ。
時雨はみんなの欲しいものを全部奪い取っていってしまうじゃないか…



何度も想った。
自分が時雨だったら…って


時雨になれたらどれだけ楽だろう…って
抱えてる想いも不安も全て捨てて、時雨になれたら…



自然に、ヒトは勝てないのに…
反発しても跳ね返されるだけなのに…



でも、解ってても自然に反抗する自分がいた。
想いは止められなくて…



“嘘”という武器を使って…
“フリ”という盾を握りしめて…




どうせ、勝者なんて決まってるのに。
ヒトの心には限界がある…


そして、自然に反撃される…
“虚心”と“寂心”という魔法を使って…



重たくて、寂しすぎる魔法。
どうして、自分だけ…って何度も想った。



変わっていく心。
募る想い。
正直な体。



そんな自分が辛すぎて、苦しすぎて…。
俺は自分の心に鍵をかけた。



一生思い出さないタメの鍵。
心の奥底に記憶を眠らせるタメの鍵…。



自分の“意思”と引き換えに手に入れることのできる“鍵”を─…。




< 149 / 323 >

この作品をシェア

pagetop