キミ色
青い門に着き大きい時計を見上げると、針は9時30分を示していた。
時計の前で荒れる息を整えるように休憩すると、また針が1つ未来へと進んだ。


最高記録じゃん…
俺、足早くなったかも?


そんな自惚れを抱きながら、運動場を1人歩いていく。


昨日の雨で出来た水溜りに太陽が反射して光を放っている。
その光がいかにも幻想的で、鋭く伸びる光はまるで水面に映る俺を突き刺しているように見えた。



お前は無力な俺を痛みつけてるの?
何も出来ないから、傷つけてるの?


そんなことをされても、解決策を見つけてあげることなど出来ない…。
若菜チャンを笑顔にさせてあげることなど出来ない。



時雨は俺の親友で、時雨は空羽を想ってて…
もし、時雨でなければ…
もしかすると何かしてあげられたのかもしれない。



何か解決策が浮かんだのかもしれない…



でも、時雨は幼馴染で…
時雨と辛い想いや苦しい想いを、一緒に過ごしたこともある。



そして─…
やっぱり俺的には、時雨に…





花音を…、想ってて欲しいから─…。





矛盾する気持ちを抱えながら、水溜りを思い切り踏む。
周りの水溜りを少し睨みつけながら、俺は教室を目指した。




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