キミ色
俺の視界に何の遠慮もなく、入って来た光景。
それは─…



たくさんの花々の前で綺麗にキスをする2人の姿だった…。



1人は栗色の重たい髪の毛を2つに結っているお姫様。
もう1人は…、メッシュの入った茶髪をかっこ良くキメている王子様。



そう…、それは、空羽と時雨の姿だった。



空羽の身長まで屈んでいる時雨。
片手に持っている赤いゾウのジョウロを持ちながら、されるがままになっている空羽。



止まってしまった俺の世界の中で、空羽のジョウロから流れる水だけが地面に水溜りを作っていく。
力の抜けた手からは、今にもジョウロが落ちそうだ。



固まってしまった俺の体は、鉛のように硬く動かない。
完全に混乱してしまった頭も、今は使い物にならない。



ただ浮かぶのは、信じたくない。
…嘘だろ?
そう想う、心と体。



でも、その姿があまりにも綺麗で…
まるで、絵で描いたような綺麗さで…


とてもお似合いな2人の姿が、俺の脳に刺激を与える…
この2人なのだから仕方がない、と言われているように、、、



だからなのかもしれない。
数秒間…、ただただ俺は呆然と見つめていることしか出来なかったんだ─…




…でも、もっと傷付いている子がいたんだ…
俺のすぐ近くで、俺よりも深く傷付いていた子が─…



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