キミ色
静かな空間の中で、泣き続ける若菜チャンと見守る俺。
でも、俺はやっぱり無力で、若菜チャンを宥めてあげることさえ出来なかった。



こうゆう時に、もし俺が時雨だったら直ぐに笑顔にさせてあげられるのだろう。
上手く落ち着かせてあげられるのだろう。



でも、今若菜チャンの目の前にいるのは、紛れもなく無力な俺で…
時雨は、空羽の元にいるのだ。



時雨の行動1つで、ここまで悲しんだり、喜んだりしてくれるヒトが、泣いてるのに…
お前は一体何をしてるんだよ…?


どうして、花音の前で…
空羽とキスなんかしてるの─…?


時雨の行動が理解できない。
意味が分からない。



混乱する頭を抱えながら、俺は若菜チャンを座らせるとその目の前にしゃがんだ。
そして、若菜チャンの右手を無理矢理開けると掌の上にリングをそっと置いた。



「…これ─…」



ぱっと輝かせた若菜チャンの目から、また大粒の泪が流れた。
若菜チャンは、掌でリングを握りしめると胸のところに押し当てた。


まるで、自分の心のように大事そうにしながら…



「蓮が…、教えてくれたんだ。」



「…え?」



「それ、宝物なんでしょ?」



そう言うと、若菜チャンはこくんと頷いてくれた。
そして泣きながら、可愛い笑顔を覗かせた。



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