キミ色
風が吹いた。
前屋上で会った時とは違う、生暖かい風が…



でも、同じように靡く蓮の綺麗な髪。
やっぱり、蓮の印象は“愛しい”んだ─…



「その瓶、開けてみて」



落ち着いた声で蓮は俺にそう促した。
言われたとおりに瓶を開くと、その中にはさらさらとした砂が入っていた。



「………砂…?」



目を丸くしてしまった俺は、瓶の中を覗いたまま自然と止まってしまった。
そしてその時、また生暖かい風が吹いてきた。



でも、さっきとは少し違う…。



…そう、その風はもう1つの蓮のプレゼントを運んできてくれたのだ─…




…………この匂い……



俺が間違える訳がない。
だってこの香りは、登校する時に俺達が交換している匂いなのだから…



「…蓮の…匂い─…」



思わず俺は言葉を零していた。


何で?
さっき風が吹いた時は、全然匂わなかったのに…




……もしかして





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