キミ色
そのまま俺は瓶を鼻に近づけた。
仄かに香る匂い。


どうやら、俺の予測は正解だったようだ。
その匂いは他の誰でもなく、俺の大好きな蓮の匂いだ…



「中の砂はね…、海に行った時の砂なんだ。」



儚く笑う蓮の顔を見て、俺はまた呆然としてしまった。



…そんな大切な砂を何で俺なんかに─…?



「櫂に、持っててほしいんだ…。」



蓮…、何で…?
蓮は、俺のせいで傷付いてるのに…何で?


もう解んない。
もう…、何もかも解んないよ─…。


どうして…、傷つけたのに…
辛い想いさせたのに…



蓮…、もう俺の頭じゃ解んないよ。
俺みたいな馬鹿の頭脳じゃ解らない…



どうして…、俺なんかを─……



自分で自分が情けなさすぎて、哀れすぎて。
何て言っていいのか解らなかった。


蓮を傷つけたのは、確かで…
俺が花音や空羽のことを蓮に言えば、きっと蓮の疑問は解ける訳で…



俺は蓮が1番喜んでくれる方法を知ってるのに…、知ってるのに─…
結局何も言えない臆病者なんだ─…



…蓮─…、好きだよ蓮。


…でも─……



その気持ちを表すかのように俺の手は小刻みに震えていた。



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