キミ色
「やっぱり櫂じゃんっ!!久しぶり!懐かしい…、あんた元気だったの!?」


派手なボーダーのロンTにジーンズ、そして赤いパンプスに濃い化粧…という、何とも言えない雰囲気を醸しだす背の高い女性。
この人こそ、鷹山 美波(ミナミ)。



俺にとっての頼れる姉貴のような存在だ。



俺は美波さんに向かって一礼すると、取っ手から手を放した。



「何さっ?!改まっちゃって!!いきなり来るは、頭下げるは、生意気なあんたが一体どしたの?!ま、とりあえず入る?」



そう言ってさっと俺を抜かし、扉を開ける美波さん。
その全く変わっていない態度が俺にとって一番の救いだった。


やっぱり、ここに来て良かった。
美波さんを見て心底そう想うと、俺の目に少し涙が浮かびあがり、返す言葉も出てこなかった。




「もぉ…相当まいってるな、こいつは…」



美波さんはそう言うと、まだぐずぐずしている俺の手を引っ張り店内へと入れた。
俺の目に懐かしい風景が映し出される。


何も変わっていないカウンター。
ジブリのような木の机に椅子。
そして、客が入って来た時に鳴り響くこの鈴も…。



何にも変わってない─…。



「マスター、おはよー!!」


「お、美波、来たか。」



ゆっくりとそう言って振り向く、白髪のおじいちゃん。
そう、このおじいちゃんがマスターなんだ。



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