キミ色
「ま、いいんだけどさ。別にあんた達のプライベートを干渉するつもりは全くないし。」


そう言うと、美波さんは煙草に火をつけた。



そういえば、去年よく時雨が美波さんが口に加えた煙草取ってたっけな…
煙草は良くないって言い続けて、それで良く美波さんと口論になってたっけ…



…懐かしい。
本当に、ここは時雨との思い出が多すぎる…


あの時は、確かに2人で笑ってたな…
時雨と2人で─…。



「書いた。」


出来るだけ平然を装って美波さんに書類を差し出す。



「はいよ、確かに!じゃあ、もう今日から入る?別に明日からでもいいよ?」



「じゃあ、とりあえず今日は帰ります。」



「そ!?じゃあ、また明日ね。ちゃんと遅刻せずに来んのよ?小さいけど結構忙しいんだから!!」



「…うん。」



「じゃあ、明日ね櫂。バァイ。」



煙草を揉み消しパンプスの音を店内に響かせながら、美波さんは奥に入っていった。
取り残される俺とレモンティー。


氷が解けてきたグラスは、もう水滴だらけだった。
ポツポツと机に流れて行く雫。



まるで俺の冷や汗のように、グラスはいつまでも水滴を流し続けていた。




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