キミ色
俺達はとりあえず蓮の家に向かうことにした。
聡君も早く寝かしてあげなきゃいけない。


夏の涼しい夜の中、俺達は駅に向かって歩いて行く。
空には少しだけ星が出ていた。



「あたし駄目だね…」


「ん?」


「こんなちょっとの我慢も出来ないなんて。自分が自分で情けないよ。」



そう言って笑う蓮。
でも、その表情が儚かったことに俺は気づかなかったんだ…



「たった2日だよ?櫂がバイト始めて放課後会えなくなって。喋る回数が減って…。なのに…、あたしもう我慢できないよ…」



「………」



「こんな毎日が続くんだって。そう思ったら怖くなった。櫂がどんどん離れて行ってしまうようで…あたしの知らない櫂が増えて行く─…」



蓮の知らない俺…
でも、それは俺も一緒。
俺の知らない蓮がどんどん増えて行く…



だったら―…
だったら俺は一体…



「どうすればいいの…?俺は…、蓮のタメに一体どうしたらいいの…?」



教えてくれよ…
バイトをやめればそれでいいの?


でもそんなこと現実的に出来ない。
いくら蓮のお願いでも、それだけは絶対に─…。



「バイトをやめてとか、もっと傍にいてとか…、そんな我が儘言わないよ。だけど…、1つだけ。1つだけあたしのお願い聞いてくれる…?」




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