キミ色
「かーい!」


その美波さんの声ではっと我に帰ると、すかさず美波さんがまた言葉を挟んだ。



「今、泣いてんだ?」


……泣いてる?
俺は、涙なんか流してない。



でも、美波さんには全てお見通しだったんだ。
やっぱり美波さんは俺の最高の姉貴だよ…。



「…は?」



「だから、今泣いてんでしょ?そこ。」



美波さんの指が向かう位置。
それは正しく俺の心臓だった。



どうして…
何で、美波さんはこんなに鋭いんだろう…?


「泣けばいいじゃん?我慢する必要なんかないよ。」



グラスを片手に持ち、柔らかい笑顔を俺に向ける美波さん。
そんな美波さんに俺は無意識に言葉を発していた。



「何で…、そんな風に思うの?俺が泣いてるって…、何でそんな風に思うの…?」



ずっと聞いてみたかった。
俺の心をすぐに読み取ってしまう美波さんに…。



1年ぶりに会ったのに…
こんなに久しぶりなのに、どうして美波さんには全てお見通しなのか…。



そして、美波さんはゆっくり笑いながら口を開いたんだ…



「そんなの簡単だよ。」



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