キミ色
「…櫂?」



もう1度、俺を呼ぶ君の声。
気づいてない訳じゃないよ。



安易にこんな気持ちで振り向けない…



振り向けないよ……



全部俺の自己満足。
ただ善良人を演じたがる俺の我が儘。



人を助けるなんて、救うなんて…
元々、不器用な俺に出来るハズなんてなかったのに…



それでも俺は…
きっと、時雨に追いつきたくて……



時雨みたいに器用な人間を演じたくて──…



心の奥底で鍵をかけて眠らせた気持ちが、いつの間にか俺の頭の隅っこでこんな気持ちとして爆発してたんだ─……




ごめんね…蓮。
…ごめん──…。




一生恨まれても、憎まれても…
きっと俺のしたことは、許されることじゃない。




本当は人を支えられるほど、立派な奴じゃない…
そんな強い奴じゃない─…。




俺は………




嘘をついてまで追いつこうとする、ただの弱虫なんだ───………





< 218 / 323 >

この作品をシェア

pagetop