キミ色
11:17本の蝋燭
月も星も何もない。
あるのは大降りの雨とさっきから大きな音を鳴らし続ける雷だけ。



そんな夜の町を傘も差さず、家に向かって駆け抜けて行く。



雨なんて…雷なんて、別にどうでも良い。
それより心配なんだ、キミが…。



どうして電話に出ないの…?
…まさか、まさか…



悪い方向にばかり頭が動く。
不安が焦りとなって俺に襲い掛かり、その不安は俺の足を急かせた…



びちゃびちゃと飛び散る水。
ざわざわと揺れ動く木。



そんな音がまた俺の不安を募らせる…。



俺は掌の中に眠るくしゃくしゃの手紙をぎゅっと強く握りしめた。




これが…これが全ての始まりだったんだ……─



…あの日
俺が若菜ちゃんと喋っていたあの日…




俺はその前に確かに空羽から貰ったんだ。
この2つ折になっていた手紙を…



今でもはっきり覚えてる。




だって…あれが空羽が始めて俺に触れた瞬間だったから……─




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