キミ色
あの時の俺はパニック状態だった…



肌に触れた小さな手。
温たかで柔らかい感触。



そして浮かんだ…、満点の笑顔をした花音。



どうすればいい…?
何て反応すればいい…?



考える暇もなく、キミはすでに出て行ってしまっていた。



俺は立ち尽くしたまま、その手紙を結局開けることが出来なかった…
蓮の笑顔を見ると、どうしても胸が痛くて。



そして、若菜ちゃんと喋っていた俺はそのまま忘れてしまっていた。
あの手紙のことを…



どうして、あの時ポケットに入れなかったんだ…
どうして、いつものようにこのポケットの中に入れなかったんだ…




そしたら…、俺は空羽の異変にもっと早く気づいてあげられたのかもしれないのに……─



そして、もしかすると蓮も…



空羽の手紙を先に見てしまった蓮も…、きっとこんなに傷付かなくて済んだかもしれないのに……




馬鹿だ…
最強に最悪だ…
何で俺はいつも肝心な時にワンテンポ遅いんだよっ…



あの時だってそうだ……



どうして…、俺はいつも気づかないの………?




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