キミ色
一瞬だけ空羽が花音と被って見えたのは気のせいだろうか?


何言ってんだろ、俺。
花音と空羽が?
そんなのあり得ないだろ。


きっと今、花音の事を考えていたからだろう。



だって、空羽と花音は全然違う。
全く似ても似つかないだろ…?


でも、それはどうやら俺の想い込みだったようだ…。




お前と花音は似すぎてたんだよ――…。




ふらふらと倒れそうになりながら歩く空羽。
体にしてはでかい鞄を右手にぶら提げて、重たそうに運んでいく。


きっと、貰った教科書などがどっさりと入っているのだろう。


1日しか経っていないのに、男子並に汚くなってるローファ。
それを見ただけで、何となく無邪気に走り回る空羽の姿が浮かぶ。



そんなことを考えるていると、俺の顔は自然と笑っていた。


まるで花音を見ているようで…
そんな訳ないのに、花音が歩いているように見えて仕方がない。


何でだよ…
どうしてだよ…?


でも、そう想ってる自分とは裏腹に、少し喜んでいる自分がいた。
花音に会えたような気がして…


空羽が花音に見えてしまう。
後ろに影のように花音が現れて見えてしまうんだ。


錯覚なのは分かっていた。
でも、この時想ってしまったんだ。


無邪気な表情以外のキミの表情が見たいと…


空羽が違う表情をすれば、その表情をした花音を見ることが出来そうで…
泣き顔、怒った顔、喜んだ顔、、、



無邪気な表情しか見せないお前の違う表情を、もっと見てみたいと想ったんだ。




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