キミ色
この時、空羽は俺に知らせてくれたのかな…
気づかせるタメにそんなことを言ったの…?



まさか…、見られてたなんて…



「すみません、このピンクの睡蓮を下さい。」



店員を引き止めて店の中に入って行く空羽。
中に行ってしまった空羽を追いかけることなく、俺は外に立っていた。



空羽に言われた言葉が胸に響いていた。



蓮…



空羽の言う通りだよ。
甘美で純心。



本当に素敵な名前を持った素敵な女性だった。
俺なんかには勿体ないぐらい可憐なヒトだった。



なのに、ぐちゃぐちゃにした…
俺が…、この手で…




そう想って、俯いた…、その時だった




「槻丘……?」



その声にゆっくりと顔を上げると、目の前には知っている人がいた。



「…………!」



どうして…
今…、あなたに会うなんて…──




俺の目に映った光景は、俺を真っ直ぐと見つめる先輩の姿だった……





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