キミ色
想像するとつい笑ってしまいそうになる。
大きい楽器を抱えて、一生懸命息を吹き込んでいる空羽なんて最高だろ?


俺はその笑いをレモンティーと一緒に飲み干し、席を立った。


台所に向かい歩いていると急に空羽が声を発した。



「櫂はクラブに入ってるの?」


ゆっくりと喋る空羽の声。
そういうことをされると、花音と被って見えてしまうんだよ…。


俺は少し動揺しながらも、空羽を見ずに答えた。


「…入ってないよ。」


「…どうして?」


不思議そうに目をでかくして俺を見る空羽。


「だってめんどいし。」


正直な答えだ。
俺はめんどくさいからクラブに入っていない。


あの上下関係とやらが大っ嫌いだからだ。
中学の時で精神をすり減らしたあの関係はめんどくさいの上級だろ?


そして、俺はもう中学で引退した時にやらないと決めたから…。


「そうなんだぁ…」


どうやら期待外れのようだ。
空羽の視線が下に向かっていく。


「空羽は入んの?」



でも、ここで会話は途切れた。
この質問の答えは空羽から返ってこなかった。



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