キミ色
聡君が指さしたものは、バドミントンだった。



でも、2つしかないラケット。
聡君はその1つを俺の片手に握らせた。



そして、もう1つは蓮の手に渡った。



「え…、聡君は?」



「これ嫌いだから!」



そう言うと走って鉄棒の方に行ってしまった。



「ちょっと…、聡!」



あなどれない…
たった5歳だって想ってたけど。



何より環境の変化に敏感なのは、子供なんだ…。



俺は羽を掴んでラケットにあてた。
綺麗な弧を描いて、蓮のもとに飛んでいく。



咄嗟に打ち返す蓮の羽を懸命に追う。
いつのまにか、俺たちは太陽がオレンジ色に染まるぐらいまで楽しんでいた。




「もう、6時じゃん!」



「嘘!?」



はっとして公園の時計を見ると、確かに針は6時をさしていた。



「やばい、俺帰るわ。」



ラケットを急いで直し帰ろうとすると、蓮が俺を呼び止めた。



「櫂!」





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