キミ色
「…っ………………―」




何も言わない時雨の胸ぐらを思いっきり掴んだ。




「なぁ!そうだろ、時雨?お前何言ってんだよ!」



時雨に言い聞かせるように言葉を続ける。




「お前は愛されてたんだよ!!」





少し憎しみもこもってたかもしれない…
その事実にずっと反発してきたんだ……



俺は時雨が羨ましかったんだ…




ずっとお前のようになりたくて、なりたくて…
器用でまっすぐなお前に憧れて…





「花音の気持ちはっ…」
「っ俺じゃない!!」




出てきてはこぼれていく言葉を遮ったのは、時雨の甘い声だった。







「俺じゃ…、なかったんだ…」







虚しく響くその時雨の声に俺は胸ぐらからゆっくりと手を放した。





下を向く時雨の表情を見ながら…








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