キミ色
「櫂?」


「─……」


「はい、どうぞ」




切なく笑いながらキミもよくそう言って、俺にレモンティーをくれたよね。




時雨と喧嘩すると、必ず俺の側に来てキミはレモンティーをくれた。
俺がレモンティーを好きになったのも、元々はキミの影響だ。




俺はそうやってくれるレモンティーが大好きで、優しい気持ちになれた。




喧嘩したときだけは、いつも花音は俺の側にいてくれた。
時雨の側ではなく、俺の側に…。



ただただ黙ってるだけなのに、俺の側にいてくれた。
何も聞かないで、でも優しい雰囲気を放ちながら…




そして、ひょっこり持って来るんだ。
“落ち着くよ”ってあの切ない表情で─…




知らない間に俺の涙は頬を伝っていた。
レモンティーと混ざり合っていく雫。
俺の泪はとめどなく流れ続ける。




溢れ出す泪。
浮かぶ横顔。
あの日、流すことの出来なかった泪が今溢れ出していた。





…─俺は、花音が好きだったんだ─…




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