キミ色
「お前、時雨と何があった?」


唐突に聞いてくる翔夢先輩の言葉に、俺は持っていたコップを落としそうになった。



「─……」



「ここに来る前時雨にあった。あいつ、久しぶりに会ったのに暗い顔して歩いてた。原因はお前だろ?」



翔夢先輩の言葉、一言一言が俺の胸に突き刺さる。


「何があったか知んねぇけど、お前にとって時雨は何だ?時雨にとってお前は何だ?
…櫂は何も分かってねぇよ。」


返す言葉が見つからない。
俺は、ただひたすら黙って聞いていることしか出来なかった。



「あんな時雨の顔、初めて見たんだよ。最初に俺等に話しかけてきた時も、あいつ人懐っこい表情でさ…」


篠先輩も本当に心配してくれているのか、少し寂しそうな表情を浮かべる。



「あいつの表情変えれんのは、お前だけなんじゃねぇの?」



「どんな時だって、時雨はいっつも“お前のタメ”って言ってあのくったくのない笑顔作ってたし!!」



篠先輩は明るくそう言うと、お菓子に手を伸ばした。
翔夢先輩もようやく表情を柔らかくして、笑った。



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