キミ色
「でもね、これが裏目に出た。あたしの勝手な感情がたくさんの人を傷つけた。自分自身の心をね、自分で汚したの。自分の気持ちに嘘をついたの。どうやっても櫂のことが忘れられなくて…」



「……」



「若菜にもいっぱい迷惑かけて、でも唯一の救いだった。若菜だけが、あたしの気持ちを全部受け止めてくれた。だから、もう若菜だけいてくれればそれでいいと想ったの。少しだけ若菜に寄りかかろうと想った。」



「うん」



「でもね、そんな時に空羽チャンに出会ってしまった。空羽チャンから受け取った手紙が憎くて、空羽チャンは悪くないのに…、知らない間に嫉妬してた。渡すの辛くて、辛くて…、凄い迷った。でも空羽チャンの方が櫂には合ってると想ったの。」



あの時の少し寂しそうな顔の正体を俺は今知った。
蓮の心の中を、あの時の蓮の沈んだ顔の意味を…



「それからは、空羽チャンに会うのが辛くて…、あんまり教室にいたくなくなった。それで、あの日授業をサボって屋上から町を眺めてたの。そしたら、櫂が来たよね。赤い扉の向こうから手をさしのべるように屋上に来たの。」



「─……。」




「びっくりしたのと嬉しいのが入り混じった感情と…、櫂の笑顔を見た瞬間ママが浮かんできた。心の底に沈めて鍵をかけてたハズなのに、櫂を見たらその鍵が簡単に壊れちゃったの。」



「……。」



「びっくりするぐらい簡単に…次から次へと、、昔の話をすればするほど、その時のママが鮮明に浮かんできたの。あの時あんな表情してくれたな、、とか、あの時助けてくれたな、、とか…。」



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