キミ色
でも、全て見破られていた─…。
時雨は俺が想ってる以上に俺のことを分かっていたんだ…。



「俺さ、別に空羽ちゃんがお前の家に住んでることにムカついたんじゃない。」



え…?



「ただ、一瞬だけ過ぎった。お前に裏切られたんじゃないかって…」



裏切る…?



「別にさ、俺は櫂が空羽ちゃんのこと好きでもいいと想う。俺も櫂も同じ人を好きになった、ただそれだけだ。」



“ただ、それだけ─…”



「…ただ、お前が俺に何にも言ってくれなかったことに、俺は感情的になったんだよ。」



優しいようで、厳しいようで、どこか諭すような言い方をする時雨は、空を見上げていた。




裏切る…
俺は時雨のことを裏切ったのか?



違うよ、時雨。
俺は時雨に気付いて欲しかったんだ。



なぁ、時雨。
お前は今、誰を見つめたんだよ。
空に視線を合わせて誰を見たんだよ…?




お前は、花音を見たんじゃないのか─…?




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