キミ色
「なぁ、空羽ちゃんさ…どことなく、花音と被って見えてるだろ?」


「……!!」



それは、さらっと流したような時雨の言葉だった。
時雨に不意をつかれたように、俺の胸は動揺した。


ますます早くなっていく鼓動。
止まることを知らず、動き続ける。



止めようとしても、まったく歯止めが利かない。
俺は自分の気持ちを抑えるのでいっぱいいっぱいだった。



“被って見える…”
そこをつかれたくなかったんだ、と言うように動揺する心が俺を制していた。


もしかして、時雨もそう見えていたのか…?



「…櫂?」


時雨は冷静にそう言いながら、俺の顔を覗いてきた。
咄嗟に下を向き、動揺を隠そうとした俺は、レモンティーを一口含んだ。




「…花音は花音、…空羽は空羽、だろ?」


また1つ、逆の事を口走る俺。
俺の口は1つずつ、時雨に嘘をついていく。



気持ちとは裏腹な言葉が時雨に伝わっていった。



「…そっか。だよな!!」



時雨は俺の言葉を聴くとふっきったように明るくなり、いつもの時雨に戻っていった。
そんな時雨の表情を俺はどうしても見ることができなかった。



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