キミ色
俺は時雨の言葉を軽くかわすと、さっき小机の上から取って台所に置いた朝食を少し食べた。
俺の口の中に広がったのは、赤いプチとまとだ。
甘酸っぱい香りと味が口の中で混ざる。



「櫂!なんか、飲み物欲しい!!」


黒いソファの上で堂々と寝ながら俺に指示する時雨は、干からびていくように倒れている。



ったく、本当に暑いの駄目な奴…



毎年時雨は夏に近づくにつれ、どんどん干からびていく。
名前は時雨のくせに、夏は大がつくほど嫌いらしい。


とは言っても、今はまだ梅雨の時期だ。
6月上旬だから、まだマシな方なのに…
もう、バテだしている時雨は7月になったら大丈夫だろうか?


「レモンティーしかないけど?」


俺は冷蔵庫の中からレモンティーを取り出してそう言うと、時雨は顔だけをこっちに向けた。



「水でいいわ」


「あ、そう。」



俺はせっかく出したレモンティーを戻し、水にチェンジしてコップの中に入れた。
コトコトと気泡を作りながら素直に流れていく水は、俺達の時間の流れのように早い。


8分目までいれると、時雨に水を渡す。
ようやく起き上がった時雨は、やっと笑顔を輝かせた。




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