キミ色
でも、聞かなくても分かった。
その人を見るだけで…
だって、そこからひょっこりと顔を覗かせたのは聡クンだったからだ。



「…聡クン、、?」


「ねぇ、櫂!!海だよ海!!」



片手に戦隊物のヒーローのプラモデルを持ちながら、俺にそう言うのは誰がどう見ても聡クンだった。
また、あの時と同じ無邪気な笑顔を浮かべている。



そこに、誰かが怒った声が鳴り響いた。



「あぁーー!!聡、入っちゃ駄目って言ったでしょ!!?」


こっちに近づいてきているのか、その声はどんどん大きくなっていく。
きっと、扉が開いていたので気付いたのだろう。



形相を変えて入って来たのは、エプロン姿の蓮だった。



「ったく、聡!!いるんでしょ?出てきなさいよ!!?」


その時、不覚にも蓮と目が合ってしまった。
急に母親から女の子に戻っていく蓮。
片手には、おたまをもっている。



蓮は咄嗟におたまを後ろに隠すと、言葉を発した。


「あ…、聡のせいで起きちゃった…?」


バツが悪そうにそう言う蓮は、俺から目をそらした。
そんな蓮に悪戯心が芽生えた俺は、立ち上がり聡クンを抱きかかえた。



「ううん、さっきの蓮の怒鳴り声で起きた。な?聡クン。」


「うん!!!」


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