キミ色
無邪気な声でそう言って大きく頷いた聡クンの頭を撫でると、俺は蓮を見た。
蓮はどことなく怖い笑みで俺を見てくる。



「あり得ないでしょ!?分かってんだからね!!男同士で悪巧みしないの!!!」



何もかも解り切った顔でそう言った蓮は、聡クンを抱き上げて頬を軽く抓った。
聡クンは、必死に逃げようとしているが顔は笑っていた。



そんな様子を見ていると、俺の胸は痛むんだ…



俺にはあんな想い出ないから…。
あんな風にお姉ちゃんとかお母さんに甘えた記憶がない。


両親がいなくても、聡クンはとても幸せなように見える。
きっと、蓮が守ってきたんだろう…


そんな聡クンが俺は羨ましいんだ。
誰かの愛情をいっぱい受けて育っていく聡クンが…



俺は、そんなに愛情を貰えなかったから─…



でも、俺は何にもわかってなかったね―……



聡クンがどれだけあの小さい体で苦しんでいたか、、



俺は、何にもわかってなかったんだ―………。




「ほぉら!早く降りて、朝ご飯食べるよ!!」


蓮は元気にそう言うと、聡クンを降ろした。


笑って従う聡クンは、すぐに1階へと走って行く。
蓮は、そんな聡クンを笑って見つめていた。



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