キミ色
「ねぇ、櫂!海だよ!海!!」



トーストを口いっぱいに頬張る聡クンが口を開いた。



「…海?」


何の話をしているのか、全く理解出来ない。
俺は、蓮の入れてくれたミルクティを含んだ。



「うん!!!今日海に行くんだよ!!」


聡クンは、まだ寝ぼけているのか?
それとも、俺の聞き間違い?



だって、海って…
ここ東京だし、、、


いくら何でも、車も運転出来ない俺たちが海へ行くのは、場違いだろう。



俺は確認するように蓮を見ると、蓮はまたあの切ない表情で微笑み、コーヒーを口に運んだ。



「櫂も一緒に行こう!?」



無邪気にフォークを右手に持つ聡クンは、太陽のような笑顔をしている。



ねぇ、蓮…
その表情は、どっちの意味なの、、?



さっきの笑み…
俺には、苦しそうにも見えてしまったんだ…



聡クンがこれほど喜んでいるから、蓮が行かないはずがないのは解っていた。



でも、ただ―…
何かを我慢してるような、、
そんな風に俺の瞳には映ったんだ、、、



どこか引っかかる蓮の笑顔が放れなかった―…。



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