キミ色
何ともいえない気持ちが胸を占領し、蓮を見れない。
でも、隣には着々と海に行く為の準備をしている聡クンがいた。


「櫂は何にも持っていかないの?!」


鞄の中に帽子やゴーグル、ビーチボールなどを詰め込みながら聡クンは俺を見た。



持っていくと言っても、俺には物が何もない。
唯一あるのは、昨日家を出た時に持っていた携帯と財布ぐらいしかなかった。



俺は手に持っていたヒーローを聡クンの前に差し出した。


「廊下に落ちてたよ?」


「本当に?!ありがとう!!」



満面の笑みを浮かべる聡クンを見ていると一瞬で分かる。
やっぱりお前は聡クンの立派なヒーローなのだと、、
そう見せ付けられた気がした。



聡クンはヒーローを大事そうに持つと、2階へと上がっていった。



「…ありがとね、櫂。ついて来てくれるの、嬉しいよ。」



急にそう言った蓮の表情を見て、俺は蓮の手をとった。
俺の右手に覆われる蓮の左手…


やっぱりお前は何かを恐れている─…



小刻みに震えている手がそう物語っているようだった、、。




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