心のキョリは1センチ
「葵ちゃん。」


木村くんの目付きが変わる。


「え…?」


押し倒されたと同時に走る吐き気。


「ごめん、そういうの無理」


体を起こそうとするが、
それを、木村くんがまた突き飛ばす。

「え!?俺彼氏だよ!?

何?嫌いなの?

彼氏だからいいでしょ!?」


「彼氏だからってなんでもしていいわけじゃない!!」

口調が強くなる。


「黙れ…」




゛黙れ、叫んだら、殺すからな゛


あの日の記憶が戻ってしまう。


フラッシュバック。



怖い…



怖い…




怖い…







ものすごい震えと吐き気。





何も感じない。





所詮、
私の事見てくれてないんだ。





所詮、
欲しかったのは、体か!?



胸が苦しくなり、
しゃがみこんだ。




「痛い!!痛い…」


胸に走る激痛と、
涙。


そんな私を目の前にしても、
木村くんは、
何一つ声すらかけない。


私の前の木村くんは、
嘲笑うかのような目で私を見ていた。


「ふっ…、ざまあみろ」



そう言って、木村くんは、
私を見下したんだ。
< 36 / 45 >

この作品をシェア

pagetop