【短編】奇跡のスパイク
序章 スパイク
ピッ ピッ ピー

主審が試合の終了を伝えるホイッスルを吹いた。



試合が終わり、その帰り道。

「いやぁ、3−0かぁ。まあいーんじゃね?善戦したよ。」

それを聞いた中島は少し怒り気味の口調でこう言った。

「なんだよ善戦って! 草太は悔しくないのかよ! 毎日練習してるのにさ!」
「うーん。結果は結果だしな。」

中島は呆れ顔をした。

「主将のお前がそんなんだからダメなんだよ〜。もっとやる気をだせ!」

しばらく歩き、T字路のところで二人は別れた。


草太は家に帰るなり、サッカーボールを自転車のカゴに乗せ、毎日個人練習している河川敷へと向かった。

草太は誰よりも練習していた。人一倍努力していた。

今日もいつものように、ランニング・ドリブル・シュートと練習をしていった。

いつものメニューをこなし、帰ろうと思った時、ベンチに人がいるのに気付いた。

ベンチに一人で座っていたのは老人だった。
草太は声をかけた。


「練習してるの見てて面白いっすか?」

老人はニッコリ笑い、こう答えた。

「楽しいよ。わしはもう体を自由に動かせない歳じやからのぅ。羨ましいんじゃよ。」


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