【短編】奇跡のスパイク
周囲に目を向け、草太は空きスペースのある右方向に走り出した。

左の吉田から、中央をあがってきた中島にパスをつなぎ、右コーナーポール方向にスルーパスを中島が出した。

「草太!走れー!!」

草太は全力で走り、ペナルティエリア内を確認した。
中にはファーサイドに吉田、ニアサイドに上田、そして中央の中島の3人。

「頼んだぞ!いっけぇ!」
草太は右ライン際からセンターリングをあげた。

右足を振り抜く瞬間、ボールとスパイクの接点がまぶしく光った。

「えっ!?」

放たれたボールは美しい弧を描き、中央にいた中島の頭に吸い寄せられる様に向かっていく。


タイミング、精度、スピードとすべてにおいて完璧なセンタリングを中島は頭でゴールに叩き込んだ。


「やったぁ!草太!決めたぞ!」

シュートを決めた中島は両手を天に突き上げ喜びを表現した。


しかし、天才仲田を起点とした帝都中はその後追加点を決め、
結局1−5で加護中は大敗してしまった。



試合後、草太はスパイクを脱ぎ、老人に手渡した。
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