運命に導かれて
「昨夜この女が城内に侵入しており捕えた次第です。何でも別世界から来たとか。くだらない作り話をするゆえ然るべき対処を。」
ルカと名乗った男は
言葉こそ丁寧だが態度はお世辞にもいいとは言えず
国王に頭をさげることもなかった。
「君、名前は?」
「…………佐伯羽衣と申します。」
まさか名前を聞かれるとは思ってもおらず
しかもその声音は思いの外穏やかなもので
羽衣は一瞬間をあけてしまう。
「君は別世界から来たと聞いているがそれは本当かい?」
「……わかりません。ただあたしは日本という場所の公園でブランコに乗っていたんです。気がついたらこのお城のお庭にいて…。信じてもらえるなんて思ってはいませんがここはあたしがいた世界ではないのだと思います。」
羽衣は正直に全てを話した。
「うむ。羽衣。君の話はわかった。何もわからぬ場所へ来てさぞ不安だったろう。君にはアリーというメイドをつけよう。部屋もすぐに用意させる。足りないものはアリーに言い好きに使うとよい。」
「父上っ。」