運命に導かれて
羽衣はふらつく足元にグッと力を入れるとバルコニーに出て風に当たる。
どのくらいそうしていただろうか。
「お嬢さん、ご気分でも優れないのですか?」
スッと隣に影が差し、それと同時に低い声が降ってくる。
「い、いえ。少し酔ったみたいで…。でも風に当たってだいぶいいみたいです。」
声の主を見上げればルカと然程変わらない年齢だろうか、切れ長の目元が涼しげな男性が立っていた。
「そう。それならよかった。もしよかったら僕と一曲踊っていただけませんか?」
目の前に手が差し出される。
いつの間にかガヤガヤとしていたホールにはワルツが流れていたようだ。
羽衣が一生懸命ワルツの練習をしてきたのは確かだがそれはあくまでルカの為。
まさか他の男性から声がかかるなど露ほども思っていなかった羽衣は返事に戸惑う。
しかし、こういう場では誘われたら断わらないのが礼儀だろう。