運命に導かれて


カインはルカの言葉に蒼白になる。



「冗談?なんの冗談だかわからないが、俺は本気だからな。」



ルカの表情はカインが今迄に見たどれよりも真剣なものだった。



カインは羽衣を一目みて気に入った。まだ自覚したばかりの感情だが、それはきっと恋と呼べるものだろう。



だがこんなに真剣なルカを目にしては



まだ想いの淡いうちに気持ちを消す努力をする他ない。



すぐには消えそうにない灯火。



恋愛にはあまり真面目とは言えなかったルカ。


そのルカが一人の少女によってここまで変わったのだ。



「わかったよ。俺も早くそんな相手に出会いたいものだな。ルカのそんな顔見れるなんて貴重だ。」



羨ましいよ。



カインは目の前のルカにも届かない程の小さな声をもらすと



もう公務以外で訪れることはないであろうクレモント家を後にした。









< 137 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop