運命に導かれて
「早くしろ。」
アリーは尚も退室を拒んでいたが
ルカの一言に羽衣に頭を下げるとそっと部屋を出ていった。
「お前、どうやって王に取り入った。」
2人になるとすぐにルカは心ない言葉をぶつけてきた。
ルカが納得するわけないことはわかっていたが
こんな言い方はさすがに傷つく。
「…あなたがあたしをよく思っていないことも怒っていることもよくわかっています。ですがこれだけは言わせて下さい。あたしは国王様に取り入ったことなどありません。まして先程お会いしたばかり、何故このようにして頂けるのかあたしにもわからないのです。」
「ふんっ。どうだかな。」
「信じて頂かなくても結構です。もし戻れる方法があればすぐにでも戻ります。あたしにだって両親もいるし生活があるの…。どうしたらいいかわからないのに……。とにかく早く戻る方法を探しますから。アリーに怒りを向けるのも止めて下さい。」
短時間にいろんなことがありすぎて
羽衣は泣くことさえ忘れてしまっていたが
両親という言葉を口にした瞬間
零れる涙をとめることができなかった。