運命に導かれて
母は自宅で習字教室を開いている。
趣味でやってると言ってはいるが
生徒さんが多いのは母の人柄からだろう。
父も母も好きなことをしなさいと
常々羽衣に言っていたし
家計的にも恵まれているのだろうから
選択肢はたくさんあった。
ただ羽衣はまだやりたいことがわからずにいた。
なにかと忙しい両親に変わって家事はそつなくこなせるようになった。
料理は大好きだが、それを仕事にとまでは考えられなかったし
昔から続けてるピアノももちろん大好きだがあくまで趣味の範囲内だと本人は思っていた。
とりあえず大学行って考えるという選択肢もあるのに
変に真面目な羽衣は目的なく進路を決めることはどうしてもしたくなかった。