運命に導かれて
ルカが中庭の真ん中辺りまで来た時
何気なく視線を上げると
そこにはバルコニーに佇む羽衣の姿。
「あいつ……。」
ルカの目には怒りが滲んでいた。
しかし羽衣は中庭には目もくれず
強い怒りの視線を向けられていることにも気づかない。
ただじっと身じろぎひとつせず月を眺めていた。
煌々と輝く月は羽衣の姿をはっきりと闇夜に映し出している。
ルカが羽衣に怒声を上げようとしたその時
羽衣の目から大粒の涙が零れだした。
羽衣の涙は数時間前に見たばかりだが
月に照らしだされた羽衣の表情は
あまりにもキレイで、儚くて
ルカは思わず息をのんだ。
「っ……。俺はどうかしてる。」
そう吐き捨てると踵を返した。