運命に導かれて
「もう泣くな。羽衣の涙はもうたくさんだ。俺お前にまだ話したいことがあるんだから泣きやめよ。」
しゃくりあげる程泣いている羽衣からは拒否の言葉はもう出てこないから
ルカはさっきよりもずっと強い力で抱き締めた。
「なぁ。羽衣。俺お前をこの部屋まで追いかけて泣かせたあの日。夜バルコニーで月を見ながら涙を零す羽衣を見たんだ。」
未だ泣き止まない羽衣。抱き締めた背中越しにまるで物語でも語るようにルカは話しだす。
「下にいる俺には…いや。下に広がる庭にすら気づかずにただ月を見て涙する羽衣が、不謹慎だけどとても儚く綺麗に見えた。」
時折漏れる羽衣の嗚咽にルカは優しく背中を撫でる。