【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
第一章 ナニワの金融屋
「へ?」

「へ?やないがなぁ。
オモロイ顔して」

「オモロイ顔なんかしてません…目が点になったというか」

「何でもいいがな、
ほなっ明日、ここに行ってや」

「へ?どこへ?」

「ここや。朝五時っ」

「ご、五時?」

「何や不服か?」

「い、いいえ…
ちょ…ちょっと早すぎやしませんか」

「しゃーないやろ。
お客はん、金返さにゃあきまへんやろ?借りたんやから」

「そ…そりゃそうですけど…」

「ほんなら頑張らんとっ。
五時からの仕事やさかい」

「はぁ

あのー…
何の仕事でしょうか」

「内容か?」

「はい…」

「何やったかなぁ。
まぁ~行ったらわかるやろ」

「はぁ」

「ほなっきばりやっ
時間厳守やでっ遅れるなやっ大事なるでっ」

「は…い…」


こうして、
ついさっきまで一文無しだった朝日喜(あさひき)昇(のぼる)は、
ナニワの金貸し城頭八(じょうずや)に金を借り、帯一本の金を手にしたのだが………


「はぁ…
こんなに要らなかったのに……貸すとなったら太いのかなぁ、あの人……」

朝日喜は帯封の札束を手に家路を帰り、
明日のために
すぐに就寝した。
< 1 / 27 >

この作品をシェア

pagetop