【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
「良かったぁ~、
やっと気づいて下さいましたねぇ」

中年の男は、
朝日喜に非常にニコニコと微笑んで言う。



「…?…あのぉ…何か」

見知らぬ男にニコニコと話しかけられる理由も覚えもなく、
朝日喜は不思議に思う。


「いやぁ~あのですね、」


今度は、若い男がニコニコと話だした。


そして、急に小声になる。


「さっき、
城頭八のビルから出てきたでしょう?」


「え?
あ、はい。

え?、何ですか?おたくらは」


「いやいや~、
別にあやしい者ではありません。

申し遅れましたっ
こういう者です~」


そう言って、
男は名刺を差し出した。

「はぁ…」

朝日喜は、徐に受け取る。


「安心ファイナンス…」

「そうですっ!
うちは安心ですよ~!」


若い男はニコニコし、
中年の男は、
朝日喜の耳元で囁いた。


「うちは城頭八とは違います。

あそこは無茶ぶりしますやんっ、
あんなっ悪評判で有名な所に、何でひっかかったのです?

私が、安心のできる御融資っ御紹介しますから。

安心のできる暮らしが
良いでしょう?」

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